金融業界に身を置いて、はや十数年。
これまでに色々な金融商品を手掛けてきた。商品といっても車や電化製品のようにモノがあるわけではないので、基本的に幾つかの仮定条件を置いてつくることになる。例えば、合理的経済人や正規分布、ランダムウォークなどなど、経済学をかじったことのある人ならば一揃い見たこと・聞いたことのあるものである。
とはいえ、仮定は飽くまでも仮定に過ぎない。実際の物事は予定通りにいくことのほうが珍しく、これを万能ととらえることにはそもそも無理がある。2008年のリーマンショックは金融工学を絶対的に信奉してしまった結果、実体社会を超える化け物が生まれてしまった。この世の中の全てのことは数値化できるとの驕り・高ぶりは瞬く間に世界中に波及し、そして破綻を迎えた。このときに金融業界の失った(市民からの)信用は大きかった。
今回のコロナ騒動下にあっても伸び続ける各国の株価を見て、不気味さを感じるのはなにも私だけではないだろう。皆の中に「リスクはコントロールできる」「価値は適正に評価されている」との驕り・高ぶりがありはしないか、今一度立ち止まって考える必要がある。
”Everybody knows the price, but nobody knows the value.”
「値段を知っているからといって、その価値を理解したことにはならない。」byカール・ゴッチ(元プロレスラー)