みちのく金融マンのつぶやきブログ(旧「メタセコイアの宿り木で」)

みちのくを拠点に生活している金融業界歴十数年のサラリーマンです。心と身体を休めつつ、はんなりとした日々を送っています。

本邦J-REIT市場の概況(2020年6月)_日銀、投信協

投資信託協会から2020年6月末時点における本邦J-REIT市場に係るデータが公表されていたので、日本銀行が進める不動産投資証券(J-REIT)買入れ状況と合わせてここで概観する。

  • 2020年6月末時点の国内籍J-REITの純資産残高は10兆4,174億円。うち、日銀が6月までに買入れを進めたJ-REITの残高(簿価)は6,370億円となり、J-REIT発行済み投資口残高に占める割合はおよそ6.1%。ここでもまた、ETF同様に日銀が子供用プールで暴れるシャチになっているのが分かる。内訳等の詳細については、【下グラフ】を参照。
  • 日銀はETF等買入れ基本要領において「(J-REITの)銘柄別の買入限度は、当該銘柄の発行済投資口の総数の10%以内(強調部は筆者)」と定めており、すでに一部銘柄においては9%を超えて当該上限値に近づきつつある模様(日経新聞関連記事「日銀のREIT購入、近づく「天井」 3割が上限に接近」)。なお、J-REITにおいても現物株式と同様に金商法下の大量保有報告書制度(いわゆる「5%ルール」)が適用される。
  • 日経新聞の記事では将来的に「上限を15%に引き上げる」との見方がなされているものの、新型コロナの影響でテレワークが推進させる中、敢えて現物不動産に投資する施策の拡大はなかなか首を縦に振りにくいのではないか。とは言え、間接的な保有であっても、すでに日銀は中規模不動産会社(例えば、直近のB/Sのうち「販売用不動産」の規模は東急不動産ホールディングスが2,873億円、東京建物が3,373億円)に比類する大家さんになっているのだ。株式ではなく現物不動産が絡むものなので、より出口戦略(※)が難しくなる。ああ、また頭が痛くなってきた。

※ 特にJ-REITは、その利益のほとんどを分配金として吐き出すことを条件に税制上の優遇を受けている(企業と異なり期中利益をほぼ吐き出すので手持ちの現・預貯金が少ない。そのため、新規物件等の取得にあっては広く公募増資といった直接金融に頼っているのが現状)ために、私がETFのところで提案したようなJ-REITの運営母体である投資会社に日銀が保有する投資口を引き取らせるといったウルトラC的なことも期待できない。ただ、投資会社は箱みたいなものなので、後ろにいるスポンサー(その多くは大手ディベロッパー)に引き取らせる案も考えられなくもないが、権利関係が複雑になりすぎる(そもそも敢えて自社のバランスシートから切り離すために別会社としたのに投資口の買い取り請求権が遡及するというのも変な話である)ため、非常に困難であろう。

 

<グラフ:本邦J-REIT市場の概況(2020年6月)>

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BOJ/ITAJ_J-REIT_202006

出典)日銀ウェブサイト及び投資信託協会ウェブサイトに掲載されたデータをもとに、筆者にて作成

 

参照)投資信託協会ウェブサイト

www.toushin.or.jp