みちのく金融マンのつぶやきブログ(旧「メタセコイアの宿り木で」)

みちのくを拠点に生活している金融業界歴十数年のサラリーマンです。心と身体を休めつつ、はんなりとした日々を送っています。

コロナ禍における貧富差の拡大

スイス金融大手UBSと大手監査法人PwCが今月7日に発表したレポート「Billionaire insights 2020」によれば、コロナ禍にも拘わらず世界の大富豪(※1)の保有資産は本年4月~7月の間に27.5%も増加し、10兆2,000億ドル(約1,081兆2,300億円)に達した。一方で、同日に世界銀行が発表したレポート「Updated estimates of the impact of COVID-19 on global poverty: The effect of new data」ではコロナの影響により、2021年末までに最大で1億5,000万人が極度の貧困(※2)に陥る可能性があるとの見解が示された。

※1 資産総額10億ドル(約1,050億円)超を指し、全世界で2,189人(前年比+40人)。

※2 1日の生活費が1.90ドル(約200円)を下回る生活。仮に世界銀行の予想どおりとなれば、世界全体の9.1~9.4%が極貧状態に。

10/11追記 今月2日、米連邦準備制度理事会FRB)は米国の金持ちトップ50人の合計資産額は下位半分に属する米国民の富の合計とほぼ等しいとする統計結果を発表。これによれば米国の上位10%だけで88%強の株式を保有することになり、パンデミックはこの傾向をますます拡大させる恐れがある。

www.nikkei.com

www.afpbb.com

 

どちらも理由はコロナで同じだが、結果はまったくの正反対だ。富める者はますます富み、貧乏人はますます困窮する。大富豪の1人当たりの平均資産額は約4,939億円(=1,081兆2,300億円÷2,189人)であるのに対し、貧乏人のそれは200円(貯金はなく最低一日分のお金を持っているものと仮定)と、なんと25億倍もの所得格差が開いてしまっている。しかも、前者はJR東日本・燕三条駅の一日平均乗降客数(2,215人)程度なのに、片や後者は日本の総人口をも上回る数である。どう考えても不均衡が生じており、その程度が甚だしいと感じるのは私だけではないだろう。

目下、世界中で切実に求められているのはコロナのワクチン・治療薬の開発であるが、これが一旦落ち着いたときに出てくるのはコロナ禍で拡大した貧富差の是正をどう行うかであろう。こんな時だからこそ、一刻も早く対応できるよう予め論点を整理しておくべきだ。

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