みちのく金融マンのつぶやきブログ(旧「メタセコイアの宿り木で」)

みちのくを拠点に生活している金融業界歴十数年のサラリーマンです。心と身体を休めつつ、はんなりとした日々を送っています。

▲インバース3倍の天然ガスETN、期限前償還へ

本日、ブルームバーグ記事(「Credit Suisse to Liquidate Natural Gas ETN That Went Parabolic」)が載っているのを見て、「またか・・・」と思わずうなだれてしまった。というのも、この運用会社は以前から同様のことを繰り返す常習犯(※1)だったからだ。

※1 記憶に新しいのは、米国上場のVIX(恐怖指数)短期or中期指数に連動していた諸々のETNだろう。

 

以前、当ブログ「金融商品レクチャー②‗ETFの連動対象指数」の中でレバレッジ指数を紹介したが、そこでは「プレーン型(のヨーグルト)よりパンチのある味付けにしたもの」と紹介した。今回のETN(※2)を設定・運用していたヴェロシティ・シェアズ(親会社は国際金融コングロマリットクレディ・スイス・グループ)は、変動率の高い天然ガス指数(※3)の▲インバース3倍ものを出していた。

例えて言うなれば、プレーン型ヨーグルトに通常量の3倍の砂糖を入れるようなもので、身体に悪いのは勿論のこと、甘くてとても食べられたものではない。あの孫悟空でさえも「界王拳」は3倍までで、かめはめ波を撃った後は満身創痍だったのに、ヴェロシティ・シェアズの公式サイトを見ると天然ガスではないが最高4倍ものもあり、もはや自殺行為としか思えない。撃った後の反動(相場が逆に振れた場合のリスク)を考えなかったのか、それともその反動すらヘッジできると思っていたのだろうか。

※2 正確に言えば、ETFは「上場投資信託」でいわゆるファンドであるが、ETNは「上場指標連動証券」でその中身は社債券(第5号有価、英語でいう”Notes”)である。なお、東証に上場するETF・ETNのレバレッジ比率は×2倍~×▲2倍まで(名証にはレバレッジものは上場していないが2012年に東証と同様の有価証券上場規程を導入しているため、同様)。

※3 具体的には、「S&P GSCI天然ガス・インデックス・エクセス・リターン🄬」。

 

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Source) Bloomberg

本ETNはすでに先月12日にニューヨーク証券取引所Arcaを上場廃止となっているため、保有者はクレディ・スイスの定める5営業日(予定では8月14日~20日まで)のインディカティブNAV(Net Asset Value; 純資産額)の平均相当額を受け取ることになるとの由。

 

ここで、金融商品の開発に関わっていた者として、すべてのレバレッジETF・ETNが悪いというのではなく、投資家が保有するポジションのヘッジツールとしての有用性はあるということを言っておきたい。つまりは何事も程度の問題で、投資をするにあっては自らのリスク許容度に応じた商品を選ぶことが大切ということである。

 

参照)VelocitySharesウェブサイト

www.velocityshares.com