みちのく金融マンのつぶやきブログ(旧「メタセコイアの宿り木で」)

みちのくを拠点に生活している金融業界歴十数年のサラリーマンです。心と身体を休めつつ、はんなりとした日々を送っています。

異次元緩和がもたらしたもの

異次元緩和導入以降、「日銀によるETF買入れ期待から、後場に入って株価は下げ幅を縮める」「日銀の社債買入れオペを期待した投資家が先回り買い」などといった文言を経済ニュースで目にすることが増えた。思えば、株価が前場下がったから日銀が後場ETF買いを入れて相場の下支えをしてくれる、本当は魅力のない社債だけれど日銀に売れば高く買ってくれるから転売してリスクゼロで儲けが出る(=日銀トレード)などとはおかしな話である。

本来相場とはどちらに転ぶかが分からないものであるはずなのに、(ほぼほぼ正確に)予測できる日銀のアクションという非日常が長い間続いたことで誰もが感覚を狂わせた。正常性バイアスは異常事態が起こってもそれを正常の範囲内としてとらえ、心を平静に保とうとする働きを指すのだが、今の状況がまさにそれだろう。ジリリリーンと非常ベルが鳴るが、いつも用務員のおじさん(日銀)が消火器でボヤを消してくれる。しまいには、本当の火事になっても誰も非常ベルを気にしなくなってしまう。煙が充満して、教室が曇ってきたのにまだ逃げないのだ。殊に、慣れというのは恐ろしい。

何も日銀トレードを止めろと言っているわけではない。現在は非日常であり、未来永劫続かない・何か変動が起きたときにはこれまでの儲けを吹き飛ばすほどの損失を被ることがあるということを、私たちは常に心に留めておくべきなのだ。

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