本日4日、日本取引所グループ(JPX)・東証より2020年7月分の受益者情報調査が発表されていたため、ここで内容を概観する。この調査レポートは2012年から実施されているもので、国内市場(東証、名証、福証及び札証(※1))に上場するETF・ETNの保有実態に焦点を当てており、わが国のETF・ETN市場の現状を反映している。
- まず、驚かされるのは受益者(≒株主)数が前年比21万8,375人アップと大幅に増えている点(レポートp1)。内訳は「個人・その他」が21万4,471人と約98%を占め、ある記事によれば特別定額給付金で初めて資産運用を始めた人もいるとのことなので、入門投資商品の一つとしてETFが買われた可能性がある。⇒これを機に東証や運用会社は、株式と比較したETFの分かり易さ(個別銘柄分析がいらない+インサイダー取引の規制対象外)や安全性(ポートフォリオ理論)をもっとアピールしてみるのもいいかもしれない。
- 次は、何といっても投資部門別保有純資産総額において「信託銀行」が前年比20%増え、シェアが82.5%(日本株指数に限定すれば88.7%)にまで拡大(レポートp7)したことである。このブログを読んでくださっている皆様はすでに気付いているかもしれないが、これはほぼ全量が日銀(※2)である。本年7月時点の東証一部の上場時価総額が565兆4,768億円、同月のETF純資産額(日本株指数に限る)が40兆7,320億円なので、これを単純計算すると現時点で日銀は日本株のおよそ6.38%を間接的に保有している最大株主ということとなる。⇒いくら異次元緩和とはいえ、自国のETF市場の9割近くを中央銀行が占める先進国はわが国を置いてない(他国は債券買入はするものの、株式/ETF買入まで踏み込んではいない)。麻薬は一度やったら止められないというが、ETF買入れという劇薬の反作用が現実味を帯びてきた今日この頃である。なお、年別の投資部門別保有比率は下【グラフ】を参照。
関連記事1)日経新聞
関連記事2)Bloomberg
※1 つい忘れがちだが、東海ETF(銘柄コード:1553)は名証に、日経300ETF(同1319)は全市場に上場。
※2 日銀が直接マーケットからETFを買い入れるのではなく、受託者である三井住友「信託銀行」(再信託としての日本カストディ銀行(=みずほFG系の資産管理サービス信託銀行+三井住友トラストHD系の日本トラスティ・サービス信託銀行))を介して実施しているため。
<グラフ:投資部門別保有比率の推移(2012年~2020年)>
出典)日本取引所グループウェブサイトに掲載されたデータを元に、筆者にて作成
参照)日本取引所グループウェブサイト