みちのく金融マンのつぶやきブログ(旧「メタセコイアの宿り木で」)

みちのくを拠点に生活している金融業界歴十数年のサラリーマンです。心と身体を休めつつ、はんなりとした日々を送っています。

李下に冠を正さず

ここ最近、グローバルで高い公職に就いている人々による疑念が相次いで報道されたので思うことを書きたい。

 

一つ目は、国際通貨基金IMF)のゲオルギエワ専務理事らによる過去のレポート(”Doing Business 2018”)において意図的に国別ランキングで中国が良くなるように操作していたのではないかとされる問題だ。9月16日には世界銀行が不正が行われていたとして当該報告書の今後の発行を取りやめると発表し、本件を受けて日米(IMFの資金拠出国2位と1位)が同氏の更迭を検討したものの、今月11日に開催されたIMF理事会では同氏の続投が支持された。このニュースを見て、昨年には世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長(次期事務局長選で再選が確実視されている)が中国を擁護するような発言で中立性が疑われる事態になったのと重なったのは何も私だけではあるまい。

IMF専務理事とWHO事務局長の二人に共通するのは、ともに新興国出身(ブルガリアエチオピア)ということだ。IMFとWHOは国際的な専門組織であり、その中立性を守るためにもトップを含めた組織が大国の意思に左右されないことは当然のことだ。ただ、二人の事例からも最早バランサーとしての新興国出身のフィルタリングは機能しなくなっているのは明瞭であり、日米欧は真剣に候補者を選定することも検討するべき時期に差し掛かっている。

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二つ目は、米連邦準備制度理事会FRB中央銀行)のトップらによる活発な株式取引である。国内の金融機関に勤めている私・水曜日のクマであるが、もちろん宣誓書・開設している証券口座を会社に届け出ており、株式取引はしていない。職員は機動的な資産運用が限られてしまうが、お客様へのフェアー(公正さ)はこれでしか担保できない。これを、日銀に相当する米FRBのトップらが行っていた。米FRBは利上げなどを担う金融市場の番人であり、テストの回答を知っている人たちによってテストが行われていたのだ。利益相反そのものであり、米国金融市場はおろか、米国民に対する冒とくといっても差し支えないだろう。このニュースは米国発ということもあり余り取り上げられることはなかったものの、事の重大さとしては計り知れないものがある。

パウエルFRB議長は倫理規定の包括的見直しに対する指示をしたと説明するが、彼自身も大量の投資信託(最大500万米ドル=約5億7,000万円)を売却した疑いが持たれており、説得力に欠けることは否めない。もしかしたら、米FRBだけではなく米財務省や米通貨監督庁等でも同様の事例があるのではないかと勘繰ってしまうぐらいだ。

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専門家に様々な制約が設けられているのは、組織の中立性の問題はもとより、フェアーの実現に向けた必要不可欠なことだからである。一金融マンとして、今一度、「李下に冠を正さず」の精神で職務に臨んでほしいと強く願うものである。