みちのく金融マンのつぶやきブログ(旧「メタセコイアの宿り木で」)

みちのくを拠点に生活している金融業界歴十数年のサラリーマンです。心と身体を休めつつ、はんなりとした日々を送っています。

点と線

点と線という言葉はよく耳にする。もっとも有名なのは松本清張推理小説だが、今回は戦争の話である。

 

本日は76回目の終戦記念日でお盆とも重なるため、自室でぼんやりとニュースを見ていた。ピコン!ピコン!!という速報ニュースが流れたので目で追えば、「アフガニスタンイスラム原理主義組織のタリバンアフガニスタンの全域を支配下に置いたとする声明を発表」と出ていて、思わず唖然。というのも、わずか1週間ほど前に米軍の撤退が決まりアフガニスタンの戦局がタリバン有利になりつつあるという外信ニュースが出たばかりだったからだ。

関連記事)日経新聞

www.nikkei.com

関連記事)CNN

www.cnn.co.jp

関連記事)BBC

www.bbc.com

関連記事)朝日新聞

www.asahi.com

関連記事)Bloomberg

www.bloomberg.co.jp

関連記事)Reuters

jp.reuters.com


news.yahoo.co.jp

私・水曜日のクマが大学生になった年に、米国同時多発テロ事件が発生し、あれよあれよという間に米軍がアフガニスタンへと展開。世界は従来のように国家対国家ではなくテロとの戦争という、新しい局面に入ったことをまざまざと思い知らされた。国家ならば国家元首を捕えたり殺害すればそれでチェックメイトだが、そういった者がいないテロ組織はどうするんだろうかと思っていたら、やはり首領を暗殺してもその意を継ぐ者が続々と出てきて一向に終わる気配が見えずにいた。

米軍は世界最強の軍隊だとは思うものの、それは正規軍同士の戦いにおいてと限定条件を付けるべきかもしれない。今回のアフガニスタンを見ていて、ベトナム戦争を思い出したのは何も私だけではないだろう。首都カブールの米国大使館の上空でホバリングするヘリコプターは、南ベトナムの首都サイゴン陥落時と全くと言っていいほどうり二つだ。

かつて日本軍は中国本土に攻め入ったが主要都市と交通路だけを抑えるにとどまり(これがまさに「点と線」)、のちの国民党や中国共産党(紅軍)の活動を抑え込むことをできなかったと批判されるが、米軍においてもこれはいえるだろう。米軍が過去に戦争に勝利した国でその後持ち直したと胸を張っていえる国は、日本だけだ。それですら、米経済学者のJ.K.ガルブレイス日経新聞に書いた「私の履歴書」の言葉を借りるなら、日本には官僚組織をはじめとする多くの優秀な人材が生き残っていたため自力で国を再興することができたのだ(たとえ、マッカーサー元帥に「日本人は12歳」と形容されようとも)。

 

立ち戻って、アフガニスタンの現状を見てみよう。米軍はこれまでに9兆円(計880億米ドル)を優に超える多額の資金をアフガニスタンに投資してきたが、一向に良くなる兆しが見えない。これは主に官僚や政治家による腐敗・汚職が原因とされ、米軍も手を焼いたようだ。兵器や装備も与え、20年弱に亘ってアフガニスタン政府軍を訓練したが、今となっては全てが無に帰した(寧ろ、自国の最新兵器がテロ組織の手に渡ったという意味では悪化した)。

 

点と線の教訓は、それらを結びつけて面的な広がりを持つものとするのは「人」であり、そしてそれは一から養成するのには時間がかかるということ。人は他人から与えられた自由を守ろうとはしない。自分で勝ち取った又は勝ち取ろうとする場合のみ、それを守ろうとして全力を注ぎこむのだ。