みちのく金融マンのつぶやきブログ(旧「メタセコイアの宿り木で」)

みちのくを拠点に生活している金融業界歴十数年のサラリーマンです。心と身体を休めつつ、はんなりとした日々を送っています。

不正か、不適切か

東証は本日10日、中小型用液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)及び商品先物大手の第一商品に対して過去の不適切な会計処理を理由として、それぞれ改善報告書の徴求と特設注意市場銘柄への指定を発表した(両社には上記に加えて上場契約違約金の徴求も併せて行っている)。

 

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Fraudulent accounting (©いらすとや)

ともに投資家の判断に深刻な影響を及ぼす虚偽の情報開示を繰り返していたとして今回の措置に至ったわけだが、個人的には「不適切な(会計処理)」という言葉が気になるのである。東証の措置理由を見れば、JDIは「経理責任者又は執行役員CFOの指示若しくは承認(決定文より)」があったと認定され、第一商品にあっては「長年にわたり歴代の代表取締役らが主導(同上)」とあることからも、不正の程度は甚だしい。しかしながら、不正(Fraud)ではなく不適切(Inappropriate)としてしまうと表現がやや弱くなり、若者言葉で言えば本来は「なし寄りのなし」又は「なし」の意味のはずなのに「なし寄りのあり」へとすり替わってしまう(若干ニュアンスが上向き)かのように思えてしまう。

 

思い返せば、元祖「忖度」や「チャレンジ!」で有名になった東芝の不正会計問題(2015年2月に内部通報で発覚)前後から不適切会計という言葉が一般に使われるようになり、メディア等でも次第にこれが浸透していった。まだ白黒が付いていない状態で不正と断定するのが憚られたのかもしれないが、不適切という言葉が持つどっちつかずのイメージが罪の意味合いを薄めているかのように私には感じた次第である。メディアのみならず金融業に携わる私たちも、言葉尻一つで人々が受け取る度合いに差がでてしまうことを認識すべきだろう。