みちのく金融マンのつぶやきブログ(旧「メタセコイアの宿り木で」)

みちのくを拠点に生活している金融業界歴十数年のサラリーマンです。心と身体を休めつつ、はんなりとした日々を送っています。

警戒水位で終わるか

今回のコロナ禍で日米の株価が続伸しているのを見て訝しんでいたが、お隣の中国は更に凄いことになっている。

主に大型株から構成される同国の上海50A株指数は連騰し、2015年の高値にあと一歩のところまで迫っているのだ。これを見た個人投資家らも都市封鎖のリベンジ消費もあってか、我先にと自らの資金をマーケットにつぎ込んでいる。ある調査では、第2四半期だけで中国のMMFマネー・マーケット・ファンド、投資資金のプール)から1,750億~2,850億ドル(20兆円弱~30兆円強)の資金が流出したというのだから、その規模と勢いたるや恐ろしい。このままのペースでいくと、今週中にも中国市場の株式時価総額は10兆ドルの大台に到達する見込みだ。

 

さすがにまずいと思ったのか、監督官庁である中国証券監督管理委員会(CSRC)も投信会社に対する「窓口指導」を行ったとされるが、焼け石に水だろう。中国には「上有政策下有対策(上に政策あれば下に対策あり)」という諺があるように、個人投資家らは必ず抜け道を探してやり遂げようとする。なお、このタイミングで中国国家隊(株を買い支える金融機関連合)を形成する全国社会保障基金理事会や国家集成電路産業投資基金は、保有株を着々と売却しているのは、なかなかに興味深い。

参考)Bloomberg東洋経済ONLNE

www.bloomberg.co.jp

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思い返せば、2015年のチャイナ・ショックのときも今回と同様、猫も杓子も借金をしてまでマネーゲームにのめり込んでいた。本土の取引所は当時導入したばかりのサーキットブレーカー(CB)を発動させて事態を沈静化しようとしたものの下げ止まらず、逆に狼狽売りが売りを呼んで更に下げる悪循環に陥った。更には当局も空売り規制やデリバティブ取引における必要証拠金の引き上げ、CBの値幅拡大、個人・機関投資家などへの極端な建玉制限といった劇薬・強硬策を短期間で次々と導入・実施したため、マーケットは完全に死んでしまった。

 

折しも、世界最大の水力発電ダムである「三峡ダム」が警戒水位を大幅に超え、決壊を避けるべく放流しているとのニュースがあったが、偶然なのかマーケットもそれと同様の状態になっているのが非常に気がかりである。仮に買い支えきれずに2015年の場面が再現されることとなったとき、焼け野原となったマーケットからは売り抜けた中国国家隊果ては国・当局に対する非難の声が上がるだろうことは容易に想像がつく。ダムもマーケットも、溢れる前に放流(=ガス抜き)するのが一番肝要なのだ。

 

Bull markets are born on pessimism, grow on scepticism, mature on optimism and die on euphoria.

「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく。」byジョン・テンプルトン(著名投資家)